呑み場『ウメダうめだ』
業態 : 立ち呑み屋
坪数 : 4.9坪
工期 : 2ヶ月
ご依頼内容 : 設計デザイン / 施工 / ブランドディレクション / グラフィック
工事前状況 : 串焼き屋居抜き
所在地 : 大阪市淀川区十三本町
概要 :
永らく飲食業界に従事されながら、色々なお店への呑み歩きも日課とされている方が今回のお施主さん。
ナチュラルに十分過ぎるマーケティングを経ていよいよ…の独立開業にお供させて頂きました。
現場は十三本町、通称『しょんべん横丁』。
あの大惨事から逞しく復興が進むもコロナの追撃で集客が戻りきらず、その後も お店の入れ替わり / 空き物件 / 休業店舗 が点在し、稼働率は5割程度。賑わいで言うと全盛期の1/3にも満たないといったトコロでしょうか。
でも工事中足繁く現場に通う中で、いつ見ても朝10時の開店と共に満席になる立ち呑み屋さんや、週末にはこの横丁を体現しに他所からやって来てる多くのお客さんに都度遭遇。
“ せんべろ ”の発祥の地の様なコノ場所のソノ光景。
やっぱりこの町にはコレが求められていて 先に繋いでいかなきゃなんだなぁ…なんて少し感傷的かつ懐古的になりつつ。
そんな需要に応えながらも、この先このエリアを引っ張っていけるお店とはどんなお店であるべきかの自問自答を繰り返して仕上げの手法を幾度も見直しました。
お施主さんからのリクエストはシンプルで、『気負わず入れる立ち呑み屋さん』。
元々はファサードのみの改修という事で着工しましたが徐々に内装の依頼が追加されそこそこの工事規模に。
結果厨房を除く全てを触る工事となりました。
気軽に…と掲げつつも、せんべろではこの辺りの安くない家賃と高騰する原価を捻出出来ない。
とは言え、最低限の単価は通したい…って意味でウラ難波的な今っぽさを創出したトコロで そういう客層 そうゆう需要じゃない。
で悩んだ挙句 “ 鈍臭さ・古臭さをギリ今っぽく表現する ”… としました。
ファサードは
・基礎部分は洗い出して砂目を出した左官
・骨組みを見せたスレート屋根
・チープな雰囲気のブラケットライト
・露出配管は鉄管ではなく塩ビ質をチョイス
・暖簾色は白をやめて酒屋の象徴の紺色に
・建具の鏡板には酸化させツヤ消しにしたウロコ鋼板
・サインは琺瑯(ホウロウ)
内部は
・節ありの杉材と構造用合板で木目が主張したチープな雰囲気に
・壁面のミラー貼りで視覚的な広がり効果と 昭和の内装感を(←こっちが本命)
・カウンター垂れ壁にイキったライン照明
塗装は全て艶ナシ。
また入り口の3連引き戸は真鍮レールにしてガラスのコーキング留めはなし。
開閉の度に発動するガラガラとした振動音で、入店時に懐かしさや敷居の低さを感じて貰う事を狙いました。
各所の選択とそのバランスは加減がなかなかに難しく、最後に暖簾を掛けてお店に成り切るのを見るまで不安は残り続けました。
お施主さんからはロゴ以外はビジュアルに関する殆どを任せて頂きました。
この横丁の雰囲気と そのオーナーさんの気取らない人柄に馴染ませつつも、これからまたこのエリアを引っ張っていくべく新しい『場』の在り方は?… の 私なりの解答です。
最後、お施主さんに『ココに僕が立ったらおかしいとか思ってるんでしょ〜笑』とニヤニヤして言って頂けた時に、なんだか勝手に報われた気がしました。
今回初めてペアを組んだにも関わらず、コストを合わせつつ細かな変更に応じてくれた製作チームにも感謝感謝です。
レトロ寄りのレトロモダンになってたらいいな…と 思うんですが、いい按配になってますでしょうか?
20230519竣工