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〜“超” 和モダン【 近未来系屋台 】〜
りんご飴専門店『りんごとあっぷるん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りんご飴専門店『 りんごとあっぷるん』

 

 

坪数    : 7.2坪(売り場1.7坪/客室3.4坪/倉庫0.3坪/厨房1.0坪トイレ0.8坪)

工期    : 3ヶ月(貸主側補修工事期間を含む)

ご依頼内容 : デザイン / 設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション / グラフィック

工事前状況 : 美容室跡居抜き(残置物はナシ)

所在地   : 大阪府東大阪市

 

概要    :

 

長年ご主人と共に飲食業を営まれ、子育てがひと段落したタイミングで別事業を展開されようとする奥様のお店づくりをお手伝いさせて頂きました。

 

これまで家事と育児 そして事業。その全てを軌道に乗せ ようやく訪れるであろう老後迄のご褒美とも取れる時期を捧げてまでして、何故新らしい事業の展開なのか…の質問に『ここでもう一回チャレンジする背中を見せる事でもって子育ての仕上げとしたい』という旨を少し照れながら話してくれたお施主さん。

 

穏やかで柔らかい雰囲気からは想像出来なかったその格好良過ぎる理由に完全にノックアウトされた私。少しでもあやかりたくなって何としてもお仕事させてもらうつもりで喰らいつきました。

 

…なんだけどご要望を組み込んでいくと当初提示されていたご予算には全くハマらず、色々やってはみたけど “ もはやこれまでか… ” で提出した見積りに『大丈夫です!注文増やしたの私ですし!』とこれまたハンサムな解答。

“ なんなんこの人…^^; ” と軽く思いつつも救われた事を工務店さんに報告。よっしゃー!で工事を開始しました。

 

近くに司馬遼太郎記念館や彌榮神社、明治初期起源の東大阪市で最も古い小学校の一つである小阪小学校と同中学校、個人商店と住宅が混在する古い町、東大阪の中小阪三丁目が舞台。

 

そこにつくるお店の形態は『りんご飴専門店』。

 

ぼちぼち店舗が増えてきているその新しめの業態をこの古い町に持ってくる。

で、とにかく目立つ様に…がファーストリクエストでした。

 

とは言えハデハデ柄々のキャワゆい感じにしても既視感のあるモノになったりチープになるだろう事をお伝えし、“ 何でココにこんなモノが…!? ”という違和感でもって目立たせる…という提案をたちまちで採用頂き、“超”和モダン『近未来系屋台』をコンセプトにプランを開始しました。

 

古い町にトレンド感の強い業態が新規出店する。

 

この事が界隈の方々とハレーションを起こさない様、せめて町に向けてこのお店のオープンスタンスさが伝わればいいなと思い2面でテイクアウトカウンターを設けほぼシースルーに。

そこに配置した上げ下げ窓は贅沢にペアグラスをチョイス。

庇は近隣住居への日光の反射に配慮し、スチールに焼き付けたシルバーの塗装はマット(艶消し)仕上げ。

外壁はモルタルのしごき…だけど長雨や気候の影響でドス黒く仕上がってしまった為防塵クリア塗装時にモルタル色に調色。

腰壁はヘアラインのSUS貼り。

 

こうして色んなテクスチャーのシルバーを集結。

 

一方で。

角の柱は既設の構造柱の四方を桜の古材で覆い、角をそれっぽく磨いて1本の太い柱に見せています。

庇に持たす格好で暖簾を設置。屋台のソレを彷彿とさせる為にスリット無しにしています。

外部の照明器具は乳白ガラスや磁器系に絞り、建具脇の店舗サインは琺瑯をチョイス。

 

これらの色濃く昭和を感じさせるテクスチャ達を、サイバー感やスペーシー感のある無機質なシルバーグレーの塊に差し込む…でコンセプトを表現しました。

 

この強めのギャップにより、 “ 何か見た事ない感じ ” “ 得体の知れない感じ ” は仮に演出出来てたとしても、結局ここを見た人から『かわいい』や『関わりたい』という好意/興味を得ないと意味がないのでその辺の加減に留意しました。

 

『2001年宇宙の旅』『スタートレック』などで観る宇宙船の船内のイメージを踏襲しつつ、ここに並ぶであろうカラフルなりんご飴が一際映える様に…という思いで売場内部は白で統一しています。

 

イートインスペースは、今後のお店の展開に自由度を持たすという意味でコンセプトに反しない程度に癖のない部屋にし、家具と飾り付けはお施主さんチョイス。

無機質な店舗デザインに彩りを差し込んで頂いています。

 

元々何故か入り口建具の脇に申し訳なさそうに設置されていた街区表示板はメンテし直してお店のVIP席に。

※詳細はエイジングのページにて

 

解体で露出した躯体の傷みや、突然の雨漏り…それ等の補修で工事の一時中断を余儀なくされ、不可抗力とは言えお施主さんには工期面で随分我慢して頂く格好になりました。

 

それでも、変えれないものは受け入れるのみ…と、どっしり構えてられたお施主さんに大変救われました。

 

初見だったにも関わらず殆どを委ねて頂き、勘違いカモ知れないけどリスペクトを感じながら気持ち良くお仕事させて頂けました。

 

最後、『ほなまた次の現場で!』とりんご飴の入った紙袋を手提げながら退散する大工さん達の背中が少しアルマゲドン的に見えた事もここに綴っておきます。

 

私が祈らずとも成功されるタイプの方なのは承知していますが、この地でこの新業態が定着する事を切に願います。

 

 

20240227竣工

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