Patisserie『 MARRON(マロホン)』
坪数 : 9.7坪(売り場3.5坪 厨房6.2坪)
工期 : 2.5ヶ月
ご依頼内容 : デザイン/設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション / グラフィック
工事前状況 : アパレル店舗跡スケルトン
所在地 : 大阪市北区同心
概要 :
20年近いご自身のキャリアの全てを洋菓子製造に捧げてこられたパティシエさん。
満を辞しての独立開業にお供させて頂きました。
webでお問い合わせ頂き、同行した現場はたまたま弊社不動産チームでお世話になっている家主さんの物件。
無理言って手付け無しで契約を引き延ばして貰っている間に内装プランと金額を確定。資金調達の目処がたって即、物件契約→着工…とお陰様でリズム良く進めさせて頂けました。
穏やかな雰囲気ながらも厨房の環境づくりに真摯に取り組まれるパティシエのご主人と、お店のブランディングにこだわる売り場担当の奥様。良いコンビだなぁと感心しつつ。
自然と明確に役割が分担されていて、完工までの報連相もスムーズにさせて頂きました。
御苗字に因んだ屋号『MARRON(フランス読みで“マロホン”)』は早々に決めておられ、続いてその栗を連想させる為のブランドカラーをフランスの伝統色と言われる『Laque(ラック)』に選定。
店舗デザインのコンセプトは、ご予算の関係上現しの躯体を活かしとする為トラディショナルとインダストリアルの融合としました。
スイーツ激戦区の大阪北区の南森町・扇町界隈で違いを見せる為に、またお施主さんご希望のイメージやその柔らかなお人柄を踏まえるとどういう表現が正しいのか…
で、本格派パティスリーを表す普遍性と新しさを感じるさせるトレンド性のバランスに配慮しました。
元々が西と南の2面開口の区画。
西陽が差さない事を確認の上、扇町筋が覗ける西側を店舗入り口 南側を厨房勝手口としました。
床・壁・天井は躯体現し後、クリア塗装。
シャッターの巻き取りシャフトが露わになった箇所はRをつけたモルタルを延長して覆っています。
売場と厨房との境界壁はキャビネットをのみ込む格好でフラットに。
木部塗装はEPの拭き取り塗装にて木目現しで着色。
焼き菓子のショーケースを兼ねたカウンターはシナ合板で構成。
ひな壇の視認性と天板の奥行きを確保しようとする事で生まれたカタチをそのままデザインとして活かしています。
ファサードの開き戸は欧州のそれみたくサンメントをあしらうかを迷いました。
結局、面材の押さえで回した枠の内にRを付けるのみとし、重さを軽減し入り易さを優先させました。
伝統と今っぽさ、重厚とカジュアル。
パティスリーやショコラティエなどを作らせてもらう際は相反するこのバランスにナーバスになります。
それが『MARRON』の場合であればどうあるべきなのか…
仕上げの最後の最後までその辺を調整しながら現場の進みを見守りました。
お施主さんの個性とイメージする顧客の人物像を踏襲しつつ、今っぽいけど伝統的で重厚ながらも入り易くてカジュアルなんだけどちゃんとしてる…みたいな具合に見えていたら自分的には狙い通りなんですが。
とにかくサジ加減がデリケートでしたが、現場が近くて救われました。
20231217竣工