中華料理『来夢来人』(チュウカリョウリ ライムライト)
業態 :創作中華
坪数 :19.6坪(1F 9.8坪 / 2F 9.8坪)
工期 :3ヶ月
ご依頼内容 :デザイン / 設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション
工事前状況 :既存店舗のリニューアル
所在地 :大阪府豊中市中桜塚
概要 :
阪急宝塚本線の岡町駅を降りてすぐの岡町商店街に入ってこれまたすぐの好立地。
近年では珍しくシャッターは稀にしか無い 活気に満ちたその商店街にて、38年の長きに渡り愛され続けた町中華『来夢来人』。
この活気を引っ張ってきた中華の雄もその年月には勝てず激しく老朽化。
先代で35年 ご子孫が受け継いで3年、一旦ここでリセット…という事で町中華『来夢来人』の2階建て1軒屋フルリニューアルプロジェクトが発足。
ご縁を頂き そこに参画させて頂きました。
お施主さんは2代目のご主人とその奥さん。
お二人共 数年に亘りフランスにある中華店で勤務され、帰国後ご実家のお店を継承。
先代が創られた地元の太いお客さんを大切にしつつも、ご自身の経験を活かした創作中華のコースや ナチュラルワインとクラフトビールの提供に取り組まれ 新しい顧客の獲得にも成功。
その自信が今回の決断の礎(いしずえ)になってる事は確かだけど、新しくなる来夢来人を誰に向けたどういう店にしていくのか…のディスカッションに多くの時間を費やしました。
これまでを支えてくれた既存顧客、新しい提案“も”受け入れてくれた既存顧客、同じくその提案“を”受け入れてくれた新規顧客。
従来の町中華っぽさとコースの似合う少しシュッとした感じと…
客層・単価、全く異なる双方を総取りしたいのは勿論だけど、ちゃんと事業として判断をした結果…で後者にウェイトを置く事に。
でも極端に間口を狭める事はせず【 従来の中華を求めて来たお客さんに気を遣わせてしまう < コースを求めて来たお客さんに見合った満足感を得てもらう 】というトコロを狙ってデザインを進めました。
解体が進み露わになってく構造。
築6,70年は経っている木造建築は幾度かの継ぎ足し工事で増床されており、余儀なくされる構造補強。作業ボリュームは想定を上回り先ずはそこに工期を割かれてしまいました。
ファサードの角材は解体で発生したモノをリユース。
建具はラワン。嵌めガラスはノンコーキングにし、開閉時のガラガラ音を愉しみます。鏡板はウロコガルバにマットクリア塗装を掛けて曇らせています。
カウンターはよりじっくりコース料理を嗜んで貰う為にハイカウンターからローへ変更。
天井は解体後の梁/根太/垂木を現しで、ただ垂木は防塵の観点から新規を増し貼りしています。
壁はトイレも含め既存も新規もALLモルタル左官。
補強を入れたとは言え決して強くはない元の壁に対しての施工という事で、ベニヤを増し貼りした上にメッシュ下地としクラックの入りを抑えています。
天井との取り合い部は古材屋で調達した国産杉を擬似桁(けた)として設置し、現しにした梁や根太との取り合い部を見切ってスッキリ見せています。
既存の古い木造部に合わせ、新規の造作にはラワンと杉足場材をチョイス。
造作箇所によって節(ふし)が有るべきor無いべきを判断基準として、それぞれの採用箇所を決めています。
厨房。ラワンベニヤに枠を回した吊り戸棚の内部は、いつもなら…の木工造作棚は油気を考慮して中止し、厨房用のSUS製品をハメ込みました。
もちろん厨房土間も打ち直し、アイカさん責任施工のスペシャル床仕上げ。排水経路も変更しグリーストラップも交換。
トイレは少しでも広くとる為、階段下は収納を部分的なものにして残りを傾斜天井に。
設備面も数年前に交換した天吊りエアコンとトイレそして一部の厨房機器以外は新調。
物置きと化していた2階は多目的スペースへと大きく変貌。時間を掛けて深く沈み傾いてしまった床を修正し、こちらも解体で出てきた梁を現しにし、ボード内部に断熱材を仕込み、架け替えた階段部は吹き抜けにし…
その吹き抜け部周辺とフロアにはステンドグラスの作家である奥さんのお父様が富山の工房にて製作された作品を設置。アンティークの家具や内装材のチョイス含めて、2階は奥さんのディレクション。
用途的に1階とは毛色を変えたいという想いを表現して頂きました。
暑さの中、缶詰めで作業を続ける手練れ大工集団へのドリンクの差し入れはゆうに100本を超えました笑
7月頭から、お盆の休暇もそこそこに みっちりやって実に3ヶ月。
エアコンの無い中、誰も倒れず完工まで漕ぎ着けれたこの90日間は 職人さん達の体力への感心と その使命感への感謝で一杯でした。
異常な酷暑だったこの2023年の夏の日を 丸ごと捧げて遂に完成した 【 新生 来夢来人 】。
天国の先代に見守られながら、無事当初の仮説通り新旧多くの人達に愛され、名店から銘店に成っていく姿を影ながら追っていきたいと思います。
20231001竣工