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〜 オヤジから受け取ったもの 〜
#23 BAR_ EMETH(エメト)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BAR_EMETH(エメト)
 
坪数    : 6.4坪(トイレ:0.40T / キッチン:1.66T / 客席:4.37T)
工期    : 1.2ヶ月
ご依頼内容 : 空間デザイン / 設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション
工事前状況 : BARの居抜き
所在地   : 大阪市中央区
 
概要    :
 
今や関西屈指のインバウンドの街 大阪心斎橋。
 
大動脈である心斎橋筋商店街を駅から南に行ってすぐの横丁『しんぶら街』。
平日でもとんでもない数の通行人が行き交い 色んな言語が飛び交うその筋を クッと折れただけで嘘の様な静けさが漂う袋小路。
恐らく昭和の開業時から存在すると思しき着物屋さん数軒と平成以降で入れ替わった飲食店や物販店など20弱の店舗が立ち並ぶ。雰囲気としては極端にコンパクトにした船場センタービル。
何十年大阪に居ても知る人の方が少ないであろうその『しんぶら街』の最奥2階にこのオーセンティックバーは存在します。
 
研究職に就いてられた若いお施主さん。お父さまを亡くされた事を機にバー開業の準備に大きくシフト。
この場を気に入られ 物件を押さえつつ空間デザインと施工業者の選定、作家さんへのキービジュアルの発注や事前の名刺の手配 などを実に粛々と確実に進める様は、ホントに初めてなの?と感じる程でした。
 
ここが心斎橋である事を忘れそうなユニークなロケーションとはいえやっぱり都会のド真ん中。
外国人観光客だけで十分商売出来てしまうであろうとしても、『しっかりと根を生やしてじっくりやりたい』と言う言葉の通り、当初からのご希望は “木目調のシックで落ち着いた雰囲気のお店” でした。
 
BARにお勤めの経験はお持ちでないながらも、お父さんがきっかけで『酒』に興味を持たれて以降 多種多様なお酒を体験し、各地の名店を訪れたり稀少酒目当てに足を伸ばされたり。
良いお酒/良いお店 を求める活動が自然とルーティン化されるに留まらず、人にお酒をつくって提供する行為もお知り合いのお店で何度か展開したワークショップにて経験済み。
お酒を文化として捉え、知ろう 学ぼうとするその姿勢は “流石のエンジニア気質” と感じざるを得ない。
その行動力と探究心でもって凄い早さで趣向を深めて来られたであろう事も想像に難しくない。
加えてインバウンド対応に困る筈がないレベルの語学力まで携えてらっしゃると…
 
『こういう人は強いわ…』と感じ 安心してご希望のお店を作らせて貰う事に集中できました。
 
 
元々がBARの居抜き。
だけどコンセプトやイメージしている営業スタイルを表現する為にほぼ全てを解体。
隠されていた梁を表しにし、屋根裏部屋の様な環境を丸まま受け入れる方向でプランを進めました。
天井の低さ故 お店の濃度を感じさせる距離近めのほっこりが感がベースになりつつも、常連客と新規客/観光客が違和感なく同居出来る一定のニュートラルさ をいかにして表現するかを課題として取り組みました。
 
ラワンベニヤを増し貼りした壁をFL800で塗り分け、既設する有機質な腰上と無機質っぽく見せた腰下とを上下でドッキングさせた様な空間構成としました。
と言うのも、事前に決めておられた屋号“EMETH”とはゴーレムを呼び起こすワードのとの事。
その土の塊の感じや四角いブロックで形成されたゴツゴツ感を取り入れる事から着想。梁上の壁を骨材を入れた珪藻土調の塗装にしているのもそれが起因しています。
 
お父さまのご生前は外出先でも何度かお酒を飲み交わした事もあったというお二人。
世の中的に実は稀なハズのこの行動は当人達としてはナチュラルだったと言います。なんとも親孝行というか子孝行というか…
一番身近な同性の先輩である『オヤジ』から多くを譲り受けたであろう関係。家ですら一緒に飲んだ事のないまま父親を亡くした私にすれば今となっては羨ましいでしかない。
仕上がった現場に佇みながら
“ ご存命ならどんな風にこのカウンターで飲んだろう… ”
なんて少しおセンチになってしまいました。
 
これから様々なお客さんに お酒をふるまう日々の中で、オーナーさんもふと想う事もあるかと思います。その時お父さんはきっとこう言います
 
“よくやったな うまいよ”
 
 
 
施工  :BOTTCH
照明  :西野照明デザイン事務所
厨房  :タウンタウン
移動家具:アスプルンド
 
撮影  :臼井淳一
 

20250903竣工

 

 

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