〜襷(たすき)を次に〜
#21 串揚げ・煮込み『 押上(オシアゲ) 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

串揚げ・煮込み『 押上(オシアゲ) 』

 

坪数    : 5.9坪(客室2.8坪/厨房2.5坪/トイレ0.6坪)

工期    : 3.5ヶ月(貸主側雨漏り補修工事期間含む)

ご依頼内容 : デザイン / 設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション / グラフィック

工事前状況 : 現状復旧跡のセミスケルトン

所在地   : 大阪市城東区

 

概要    :

 

大学進学で愛知から京都に移られ 在学期間中に体現された関西の飲食店の温かさに “いつか自分も関西で店を持ちたい!”と心に決められたお施主さん。

 

卒業後はご出身地に戻り 有名飲食店で数年修行されたのちに開業資金確保の為に転職。ある程度目処がついた段階で在職しながら出張ベースで物件探索と内装業者選定… の際に接点を持たせて頂きました。

 

お話をお聞きして伝わってくる 夢の実現の為の行動力や計画性の高さと “人生一回っきり / 何事もやってみないと判らない / 自分が納得できる人生を” というコメントから垣間見える強いチャレンジ精神。だけど立ち居振る舞いは極めて謙虚でらっしゃる。

このバランスにヤラれ初めて、『僕に作らせてください!』って言わされちゃったお客さん。

 

2度目の大阪出張時に内覧された本物件を気に入られ 作図と見積りを急ぐも肝心の融資の目処がつかないまま不動産側の都合に譲歩し、先に物件契約。

それ程までにモノにしたい場所という事なんだけど、既に家賃が発生している状況下で思いのほか難航する資金調達。余儀無くされる着工遅延と工期の延滞。

 

長い時間を要しましたが、お施主さんはじめ皆の労が奇跡的に報われ無事完工を迎えることが出来ました。

 

 

この現場は大阪城東区の今福東。

 

お年寄りが多い街ながら 人口も世帯数も事業所数も増え続けている上向きな町。

国道1号線が府道8号(鶴見線)へと名を変える蒲生四丁目の交差点から西へ少し。

その鶴見線から1ブロック南下した角地にある鉄骨造の単独平屋。

 

元が餃子が売りのラーメン屋さんだっただけに 引き込まれているインフラも十分(グリーストラップだけ何故か無かったが)。

飲食店を開業する環境として絵に描いた様なロケーション。

先に物件を押さえたくなっちゃうのも十分理解出来る、そんな場所。

 

構想される業態は串揚げと煮込みを主とした居酒屋。

ただ坪数や区画の形からすると座席を設ける事が困難でカウンターのみのスタンディングにしか出来ない。でも愛知では立ち呑み文化がほぼ皆無との事で 当初悩まれていました。

追って大阪の飲食市場をリサーチ。そもそもその文化が定着している事や改めてトレンドに成っている事を認知され業態のシフトをご判断。

 

お施主さんのご要望とお人柄 そして街柄を考慮し デザインコンセプトを『昭和の和装な令和のスタンド』としてプランを進めました。

古臭い立ち呑み屋然としたイメージをベースに 一定の今っぽさは感じる…というトコロを狙いました。

 

なかなか無いであろうサイズ感のテントはフレームを残し既存を撤去。 出入口とテイクアウト部の必要な箇所だけ新規で張り直し。

外部のぼけたピンクがかった吹き付け塗装も既存。狙って出せる色じゃないし妙に雰囲気を感じたもので。

予算とは関係無く 既存活かしの箇所を意識的に確保し、歴代の入居者と古い街へのリスペクトも表したつもりです。

 

建具含む木工仕上げは全てラワン。

設置箇所に応じて合板と無垢とを使い分けています。

 

建具のガラスをモールガラスに。

ほぼパノラマな見え方になる店内のプライバシー確保という意味合いと、懐かしさやホッコリ感の演出とを兼ねています。

 

のちに展開予定のテイクアウト用に厨房直結の小窓を設置。

和装なデザインに折れ窓はいかがなものかとも思いましたが  “動き” を足した方が良いという判断で上げ下げ窓ではなくこちらに。

 

カウンター天板はt30のラワン合板で木口部は2枚貼りで厚みを持たせています。

ここは今っぽさより既視感・安心感を優先しています。

 

店内外に見えてくる欄間は高さ関係を統一して この店舗のデザインと設計上の一つの基準としています。

ファサードの垂れ壁からトイレ開口まで繋がったこのラインが生み出すカクカク感が なんとなくの今っぽさを醸し出してくれていればなぁと思うトコロです。

 

モルタルで仕上げたカウンターの腰壁の足元には 目地ナシで並べたブロックの上に踏み板を設置した足掛けを。

これは来店者がなるべく楽に飲食できる様にカウンター側に体を預け易くする…という事、またそれによって自然とトイレ導線が確保される という二次効果を狙っています。

 

ほぼ木工と左官で仕上げた空間にデザインコンセプトの範疇内で何かエッセンスになるテクスチャを… という意味で客席奥入隅にウロコ調ガルバリウムを割り付けた壁を。

恐らくココは店内で一番衣服が擦れ易い箇所であろうという事も兼ねての選択です。

 

正面右のメインのサイン上部にはオリジナルのポーチライトを。

軒先に佇む門番としての地味で物言わぬ愚直さ… みたいなものを表してみました。

 



 

多くのリスクを承知で他府県から転居しての開業。
“ 誰かの背中を押したい ”という意図のもと 創られたこの場の名は『押上』。

 

ここには 当時勇気をくれた 関西の飲食店のあの雰囲気をいつか提供する側になりたい そういう場にしたい という想いが込められています。

 

この場で後押しされた誰かが、また違う誰かの背中を押す…

そんなロケット鉛筆みたいな好循環がここから生まれれば素敵だなと思います。

 

 

 

施工  :内山大樹(ハナケン)

照明  :西野照明デザイン事務所

電気空調:一粒万倍

塗装  :KCR

厨房  :タウンタウン

金物  :マーサーステンレス

テント :大谷テント

提灯  :花月堂

装飾  :小西康太(segno)

 

撮影  :臼井淳一

 

 

20240831竣工

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bar『 manabu 』

 

坪数    : 11.2坪(客室7.0 / カウンター厨房及びバックヤード3.6 / トイレ0.6坪)

工期    : 3ヶ月

ご依頼内容 : デザイン / 設計 / 施工 / 厨房設備 / 家具選定 / ブランドディレクション / グラフィック / 各種備品製作

工事前状況 : スナック居抜き(一部残置物アリ)

所在地   : 兵庫県西宮市

 

概要    :

 

老舗ホテルグループの飲食部署においてバーテンダーとして実に30年を勤め上げた元ホテルマンさんの独立開業にお供させて頂きました。

 

そのキャリアを都会のド真ん中で積み上げてこられ そこで多くのファンをつくってこられた関係上、当初は大阪のターミナル周辺での開業を目論んでられました。

しかしながら物件模索中に不動産事情を目の当たりにされ対象エリアをシフト。

ご自身のご出身地である兵庫県西宮市を今後の拠点作りの場に、と決断されました。

 

現場は阪神甲子園駅から北へ徒歩8分。

甲子園球場とJR甲子園口との中間に位置するそのエリアは、球場から海へ向かう南側と少し毛色の違う閑静な居住区。

大きなお屋敷・幼稚園・公園が点在する穏やかで住み良い地域。

 

回転と単価とサービスの全てを高い水準で求められ続けてきたご経験を、慣れ親しんだセミローカルな町で受け入れられるモノに変換する事が命題に。

 

そこで

 

■ 近隣の方々に『リラックスできてステイタスも感じれるサードプレイス的なバーが身近に出来た』と感じて貰う

■ ちょっと足を伸ばしてでも定期的に目掛けてきたくなる場所

■ 知ってる事を誇れる場所

ひいては同業者の方やこれからバー開業を考えてられる方が何かを感じに来店される

 

そんな場を創ろうと相成りました。

 

携えられた高い教養や知識や技術と、控えめで穏やかな誰からも愛されるキャラクター。

後はそれを発揮する『場』のつくり方さえ間違わなければ、多少時間は掛かってでも上記の様に使って貰える様に成る筈 

 

環境的にペルソナイメージは限定せず、少しでもお酒が飲める人であればどなたでも非日常を感じながら思い思いの時間をゆったり過ごして貰える場所に。

みんなに向けた場所だけどきちんとリスペクトは頂戴出来るそんな空間を想像しながらプランを固めていきました。

 

メインのL字カウンターに加え、壁を向いたカウンターとラウンジ席を設けています。

マスターと顔見知りだったり常連に連れられてじゃないと行きにくい様では皆の場所には成り難い。

マスターとお話しをしながらお酒を愉しむ以外の色んな使い方をして貰える様、小さいお店ながら3つのシーンを設けています。

 

解体で現れたSRC造の躯体は壁も天井も活かせる箇所は全て活かし。

manabu』という事で黒板から着想した深いグリーンとオークで染色した木工による 大正ロマンなカラーリング。

インダストリアルと『和』を調和させ、シャープな空間なんだけとなんか和む(なごむ)あったかいんか寒いんか解らんを狙いました。

 

インテリアの主役であろうL型ペンダントライトは特注品。

工場や納屋なんかにぶら下がっていた、紐で引っ張って点灯/消灯する昔ながらの山型の笠付きの蛍光灯ライト。アレを今っぽくしたら…をコンセプトに、1本物の自由変形のLEDチューブライトを起点に作りました。デザインを鈍臭く振っているぶん M6の寸切りでの3点持たせでスッキリ見せています。

設置するまでめちゃめちゃ心配でしたが上手くハマって大満足。

 

ライティングに関してはあまりメリハリを付けすぎず、明るくも暗くもない…ぐらいにし、『ココはこういう場所です』という主張を避けています。

それぞれの解釈でやはり思い思いに使って貰い易い雰囲気作りを狙っています。

 

木は建具も含め全てラワン。

移動家具のうち、ラウンジ席のローテーブルはオリジナル。

こういうの既製品でありそうな気もするけど、見当たらなかったんで作りました。

 

嵩上げ部の床材…も特注品。

打ちっぱなしの躯体の冷たさと、スタッコ調の造作壁の暖かさを融合させるポイントになる箇所と捉えて仕上げ材を選定。

フローリングは暖かくなり過ぎるし、土間では冷たくなり過ぎるし…

うまい具合に温度感を合わせる為に450角にカットした溶融亜鉛メッキ鋼板を床タイルとして貼る、としました。

大判のフラットな磁器タイルと迷いましたが、鋼材でありながら厚く被覆された亜鉛メッキによるトロみの具合が丁度いいと思い。

あまり床材として使われる事もないでしょうから必然的に差別化にも繋がるかと。

 

外部のサインは木目が主張した板目のケヤキ材にUVにてロゴを転写。

控え目なサイズとややオーセンティックな見え方で店内との軽いギャップを狙います。

 

A型看板は温存していたスチールの折り畳み構造。階上に設置となる為、倒れ難い一定の重量と日課となる上げ下げ作業の負荷軽減という矛盾を可能にします ※詳細は什器/看板ページ

 

15mm程のRを付けたモルタル巾木と床面の入隅部 / 大きめの面取りをした木小口 / R処理を施した新規壁の出隅 …

仕上げの部分で柔らかさを出し、お施主さんのキャラクターとの調和を図る細工をしています。

 

 

長らく構想されていた大阪の中心部での開業からローカルでのそれへと変更され、そこでの成功にはこういった店舗の存在意義の明確化が必要であろうと判断されるその決断力は天晴れなモノがありました。

物件が未定な段階で最初にお会いしてから、実際の工事契約までに1ヶ月と少ししか掛かっていないというスピード感。

それに限らず諸々の仕様を決めるにしても決断が早い… 私もスピードには自信がある方ですが “この人には敵わんわ…” と感じながら至極リズミカルにお仕事をさせて頂けました。

 

開放的とも隠れ家的ともとれる絶妙な場所で、そこにニーズがあるか否かでは無く『潜在的なニーズをくすぐる』という観点から創出された大人のサードプレイス『Bar manabu』。

必ずやこの場が1人でも多くの人の無くてはならない場所に成ってくれる事を願います。

 

 

施工  :内山大樹(ハナケン)

照明  :西野照明デザイン事務所

電気空調:一粒万倍

塗装  :KCR

厨房  :タウンタウン

金物  :マーサーステンレス / INTERACTIVE Inc.

家具  :アスプルンド

装飾  :小西康太(segno)

 

撮影  :臼井淳一

 

20240831竣工

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りんご飴専門店『 りんごとあっぷるん』

 

 

坪数    : 7.2坪(売り場1.7坪/客室3.4坪/倉庫0.3坪/厨房1.0坪トイレ0.8坪)

工期    : 3ヶ月(貸主側補修工事期間を含む)

ご依頼内容 : デザイン / 設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション / グラフィック

工事前状況 : 美容室跡居抜き(残置物はナシ)

所在地   : 大阪府東大阪市

 

概要    :

 

長年ご主人と共に飲食業を営まれ、子育てがひと段落したタイミングで別事業を展開されようとする奥様のお店づくりをお手伝いさせて頂きました。

 

これまで家事と育児 そして事業。その全てを軌道に乗せ ようやく訪れるであろう老後迄のご褒美とも取れる時期を捧げてまでして、何故新らしい事業の展開なのか…の質問に『ここでもう一回チャレンジする背中を見せる事でもって子育ての仕上げとしたい』という旨を少し照れながら話してくれたお施主さん。

 

穏やかで柔らかい雰囲気からは想像出来なかったその格好良過ぎる理由に完全にノックアウトされた私。少しでもあやかりたくなって何としてもお仕事させてもらうつもりで喰らいつきました。

 

…なんだけどご要望を組み込んでいくと当初提示されていたご予算には全くハマらず、色々やってはみたけど “ もはやこれまでか… ” で提出した見積りに『大丈夫です!注文増やしたの私ですし!』とこれまたハンサムな解答。

“ なんなんこの人…^^; ” と軽く思いつつも救われた事を工務店さんに報告。よっしゃー!で工事を開始しました。

 

近くに司馬遼太郎記念館や彌榮神社、明治初期起源の東大阪市で最も古い小学校の一つである小阪小学校と同中学校、個人商店と住宅が混在する古い町、東大阪の中小阪三丁目が舞台。

 

そこにつくるお店の形態は『りんご飴専門店』。

 

ぼちぼち店舗が増えてきているその新しめの業態をこの古い町に持ってくる。

で、とにかく目立つ様に…がファーストリクエストでした。

 

とは言えハデハデ柄々のキャワゆい感じにしても既視感のあるモノになったりチープになるだろう事をお伝えし、“ 何でココにこんなモノが…!? ”という違和感でもって目立たせる…という提案をたちまちで採用頂き、“超”和モダン『近未来系屋台』をコンセプトにプランを開始しました。

 

古い町にトレンド感の強い業態が新規出店する。

 

この事が界隈の方々とハレーションを起こさない様、せめて町に向けてこのお店のオープンスタンスさが伝わればいいなと思い2面でテイクアウトカウンターを設けほぼシースルーに。

そこに配置した上げ下げ窓は贅沢にペアグラスをチョイス。

庇は近隣住居への日光の反射に配慮し、スチールに焼き付けたシルバーの塗装はマット(艶消し)仕上げ。

外壁はモルタルのしごき…だけど長雨や気候の影響でドス黒く仕上がってしまった為防塵クリア塗装時にモルタル色に調色。

腰壁はヘアラインのSUS貼り。

 

こうして色んなテクスチャーのシルバーを集結。

 

一方で。

角の柱は既設の構造柱の四方を桜の古材で覆い、角をそれっぽく磨いて1本の太い柱に見せています。

庇に持たす格好で暖簾を設置。屋台のソレを彷彿とさせる為にスリット無しにしています。

外部の照明器具は乳白ガラスや磁器系に絞り、建具脇の店舗サインは琺瑯をチョイス。

 

これらの色濃く昭和を感じさせるテクスチャ達を、サイバー感やスペーシー感のある無機質なシルバーグレーの塊に差し込む…でコンセプトを表現しました。

 

この強めのギャップにより、 “ 何か見た事ない感じ ” “ 得体の知れない感じ ” は仮に演出出来てたとしても、結局ここを見た人から『かわいい』や『関わりたい』という好意/興味を得ないと意味がないのでその辺の加減に留意しました。

 

『2001年宇宙の旅』『スタートレック』などで観る宇宙船の船内のイメージを踏襲しつつ、ここに並ぶであろうカラフルなりんご飴が一際映える様に…という思いで売場内部は白で統一しています。

 

イートインスペースは、今後のお店の展開に自由度を持たすという意味でコンセプトに反しない程度に癖のない部屋にし、家具と飾り付けはお施主さんチョイス。

無機質な店舗デザインに彩りを差し込んで頂いています。

 

元々何故か入り口建具の脇に申し訳なさそうに設置されていた街区表示板はメンテし直してお店のVIP席に。

※詳細はエイジングのページにて

 

解体で露出した躯体の傷みや、突然の雨漏り…それ等の補修で工事の一時中断を余儀なくされ、不可抗力とは言えお施主さんには工期面で随分我慢して頂く格好になりました。

 

それでも、変えれないものは受け入れるのみ…と、どっしり構えてられたお施主さんに大変救われました。

 

初見だったにも関わらず殆どを委ねて頂き、勘違いカモ知れないけどリスペクトを感じながら気持ち良くお仕事させて頂けました。

 

最後、『ほなまた次の現場で!』とりんご飴の入った紙袋を手提げながら退散する大工さん達の背中が少しアルマゲドン的に見えた事もここに綴っておきます。

 

私が祈らずとも成功されるタイプの方なのは承知していますが、この地でこの新業態が定着する事を切に願います。

 

 

20240227竣工

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Patisserie『 MARRON(マロホン)』

 

坪数    : 9.7坪(売り場3.5坪 厨房6.2坪)

工期    : 2.5ヶ月

ご依頼内容 : デザイン/設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション / グラフィック

工事前状況 : アパレル店舗跡スケルトン

所在地   : 大阪市北区同心

 

 

概要    :

 

20年近いご自身のキャリアの全てを洋菓子製造に捧げてこられたパティシエさん。

満を辞しての独立開業にお供させて頂きました。

 

webでお問い合わせ頂き、同行した現場はたまたま弊社不動産チームでお世話になっている家主さんの物件。

無理言って手付け無しで契約を引き延ばして貰っている間に内装プランと金額を確定。資金調達の目処がたって即、物件契約→着工…とお陰様でリズム良く進めさせて頂けました。

 

穏やかな雰囲気ながらも厨房の環境づくりに真摯に取り組まれるパティシエのご主人と、お店のブランディングにこだわる売り場担当の奥様。良いコンビだなぁと感心しつつ。

自然と明確に役割が分担されていて、完工までの報連相もスムーズにさせて頂きました。

 

御苗字に因んだ屋号『MARRON(フランス読みで“マロホン”)』は早々に決めておられ、続いてその栗を連想させる為のブランドカラーをフランスの伝統色と言われる『Laque(ラック)』に選定。

 

店舗デザインのコンセプトは、ご予算の関係上現しの躯体を活かしとする為トラディショナルとインダストリアルの融合としました。

 

スイーツ激戦区の大阪北区の南森町・扇町界隈で違いを見せる為に、またお施主さんご希望のイメージやその柔らかなお人柄を踏まえるとどういう表現が正しいのか…

で、本格派パティスリーを表す普遍性と新しさを感じるさせるトレンド性のバランスに配慮しました。

 

元々が西と南の2面開口の区画。

西陽が差さない事を確認の上、扇町筋が覗ける西側を店舗入り口 南側を厨房勝手口としました。

 

床・壁・天井は躯体現し後、クリア塗装。

 

シャッターの巻き取りシャフトが露わになった箇所はRをつけたモルタルを延長して覆っています。

 

売場と厨房との境界壁はキャビネットをのみ込む格好でフラットに。

 

木部塗装はEPの拭き取り塗装にて木目現しで着色。

 

焼き菓子のショーケースを兼ねたカウンターはシナ合板で構成。

ひな壇の視認性と天板の奥行きを確保しようとする事で生まれたカタチをそのままデザインとして活かしています。

 

ファサードの開き戸は欧州のそれみたくサンメントをあしらうかを迷いました。

結局、面材の押さえで回した枠の内にRを付けるのみとし、重さを軽減し入り易さを優先させました。

 

伝統と今っぽさ、重厚とカジュアル。

パティスリーやショコラティエなどを作らせてもらう際は相反するこのバランスにナーバスになります。

それが『MARRON』の場合であればどうあるべきなのか…

仕上げの最後の最後までその辺を調整しながら現場の進みを見守りました。

 

お施主さんの個性とイメージする顧客の人物像を踏襲しつつ、今っぽいけど伝統的で重厚ながらも入り易くてカジュアルなんだけどちゃんとしてる…みたいな具合に見えていたら自分的には狙い通りなんですが。

 

とにかくサジ加減がデリケートでしたが、現場が近くて救われました。

 

 

 

20231217竣工

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

格闘技スタジオ『 team KIZUNA(チーム キズナ)』

 

 坪数    : 65.5坪(1F 32.7坪 / 2F 32.7坪)※うち施工面積34.2坪(1F 1.5坪 / 2F 32.7坪)

工期    : 2.3ヶ月

ご依頼内容 : デザイン/設計 / 施工 / 設備 / ブランドディレクション / グラフィック

工事前状況 : 工場

所在地   : 大阪府門真市ひえ島町

 

 

概要    :

 

現役プロ格闘家の柴田”MONKEY”有哉さんのスタジオ『team KIZUNA』。

 

昨今格闘技は、観るだけのモノではなく競技として参加したり自身を鍛える為だったり健康目的だったり…以前よりスポーツとして身近になりかなり裾野は広がっている様子。

 

たまたまキッズの教室を見学させて貰いましたが、まずその生徒数に驚き。

アットホームな雰囲気ながら『心(こころ)』を鍛える、『お子さんを預かっている』というストイックさを感じます。

 

親目線で言う “ とりあえず習わせといたらおかしな事にならない ” という絶対の信頼の剣道や柔道、それらと何ら変わらない神聖さ。そりゃ親御さんもココに通わせるわ… と生徒増加傾向の理由を一瞬で知らしめされました笑

 

大人子供や男女に関係なく増える生徒さん達を許容する為に、既存スタジオを勝手の宜しい様に改装する…が当初のプロジェクト内容でした。

 

プランも資金調達も見積り金額も確定させていよいよ…の頃に物件側の大人の事情で白紙に…

急遽移転を検討しないといけなくなった柴田さん達。

 

広さが必要だし既存の生徒さん達の事を考えると遠くへは越せないし…で難航する物件探し。

 

諸々の経過の連絡を頂きながら、半年後にようやく理想を絵に描いた様な転居先に巡り会われ、晴れてプロジェクトが再始動。

 

十分な広さを擁するその新天地に対して、予算の関係上フェーズを分けてファサードと2階、そして1階の水周りを1期工事とする事に。

 

床や壁のマット類などの初めて使う材料の事やトレーニング機材について色々教えて頂きながら何とか一旦、納めさせて頂きました。

 

令和4年の春先にお話を頂き実に足掛け1年半に渡る大引越しでしたが、やり切られたteam KIZUNA、天晴れでございました。

 

関西最大級となった格闘技スタジオ『team KIZUNA』。

1階のトレーニングフロアやフロントの本工事を残してはいますが、2期工事の際はまた共に汗かきましょう。

 

20231010竣工(一期工事)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中華料理『来夢来人』(チュウカリョウリ ライムライト)

 

業態    :創作中華

坪数    :19.6坪(1F 9.8坪 / 2F 9.8坪)

工期    :3ヶ月

ご依頼内容 :デザイン / 設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション

工事前状況 :既存店舗のリニューアル

所在地   :大阪府豊中市中桜塚

 

 

概要    :

 

阪急宝塚本線の岡町駅を降りてすぐの岡町商店街に入ってこれまたすぐの好立地。

 

近年では珍しくシャッターは稀にしか無い 活気に満ちたその商店街にて、38年の長きに渡り愛され続けた町中華『来夢来人』。

この活気を引っ張ってきた中華の雄もその年月には勝てず激しく老朽化。

先代で35年 ご子孫が受け継いで3年、一旦ここでリセット…という事で町中華『来夢来人』の2階建て1軒屋フルリニューアルプロジェクトが発足。

ご縁を頂き そこに参画させて頂きました。

 

お施主さんは2代目のご主人とその奥さん。

 

お二人共 数年に亘りフランスにある中華店で勤務され、帰国後ご実家のお店を継承。

 

先代が創られた地元の太いお客さんを大切にしつつも、ご自身の経験を活かした創作中華のコースや ナチュラルワインとクラフトビールの提供に取り組まれ 新しい顧客の獲得にも成功。

 

その自信が今回の決断の礎(いしずえ)になってる事は確かだけど、新しくなる来夢来人を誰に向けたどういう店にしていくのか…のディスカッションに多くの時間を費やしました。

 

これまでを支えてくれた既存顧客、新しい提案“も”受け入れてくれた既存顧客、同じくその提案“を”受け入れてくれた新規顧客。

従来の町中華っぽさとコースの似合う少しシュッとした感じと…

客層・単価、全く異なる双方を総取りしたいのは勿論だけど、ちゃんと事業として判断をした結果…で後者にウェイトを置く事に。

でも極端に間口を狭める事はせず【 従来の中華を求めて来たお客さんに気を遣わせてしまう < コースを求めて来たお客さんに見合った満足感を得てもらう 】というトコロを狙ってデザインを進めました。

 

解体が進み露わになってく構造。

築6,70年は経っている木造建築は幾度かの継ぎ足し工事で増床されており、余儀なくされる構造補強。作業ボリュームは想定を上回り先ずはそこに工期を割かれてしまいました。

 

ファサードの角材は解体で発生したモノをリユース。

 

建具はラワン。嵌めガラスはノンコーキングにし、開閉時のガラガラ音を愉しみます。鏡板はウロコガルバにマットクリア塗装を掛けて曇らせています。

 

カウンターはよりじっくりコース料理を嗜んで貰う為にハイカウンターからローへ変更。

 

天井は解体後の梁/根太/垂木を現しで、ただ垂木は防塵の観点から新規を増し貼りしています。

 

壁はトイレも含め既存も新規もALLモルタル左官。

補強を入れたとは言え決して強くはない元の壁に対しての施工という事で、ベニヤを増し貼りした上にメッシュ下地としクラックの入りを抑えています。

 

天井との取り合い部は古材屋で調達した国産杉を擬似桁(けた)として設置し、現しにした梁や根太との取り合い部を見切ってスッキリ見せています。

 

既存の古い木造部に合わせ、新規の造作にはラワンと杉足場材をチョイス。

造作箇所によって節(ふし)が有るべきor無いべきを判断基準として、それぞれの採用箇所を決めています。

 

厨房。ラワンベニヤに枠を回した吊り戸棚の内部は、いつもなら…の木工造作棚は油気を考慮して中止し、厨房用のSUS製品をハメ込みました。

もちろん厨房土間も打ち直し、アイカさん責任施工のスペシャル床仕上げ。排水経路も変更しグリーストラップも交換。

 

トイレは少しでも広くとる為、階段下は収納を部分的なものにして残りを傾斜天井に。

 

設備面も数年前に交換した天吊りエアコンとトイレそして一部の厨房機器以外は新調。

 

物置きと化していた2階は多目的スペースへと大きく変貌。時間を掛けて深く沈み傾いてしまった床を修正し、こちらも解体で出てきた梁を現しにし、ボード内部に断熱材を仕込み、架け替えた階段部は吹き抜けにし…

 

その吹き抜け部周辺とフロアにはステンドグラスの作家である奥さんのお父様が富山の工房にて製作された作品を設置。アンティークの家具や内装材のチョイス含めて、2階は奥さんのディレクション。

 

用途的に1階とは毛色を変えたいという想いを表現して頂きました。

 

 

暑さの中、缶詰めで作業を続ける手練れ大工集団へのドリンクの差し入れはゆうに100本を超えました笑

7月頭から、お盆の休暇もそこそこに みっちりやって実に3ヶ月。

 

エアコンの無い中、誰も倒れず完工まで漕ぎ着けれたこの90日間は 職人さん達の体力への感心と その使命感への感謝で一杯でした。

 

異常な酷暑だったこの2023年の夏の日を 丸ごと捧げて遂に完成した 【 新生 来夢来人 】。

 

天国の先代に見守られながら、無事当初の仮説通り新旧多くの人達に愛され、名店から銘店に成っていく姿を影ながら追っていきたいと思います。

 

 

 

20231001竣工

 

 

 

 

 

 

 

 

cake_stand『être』(ケーキスタンドエートル)

 

業態    :スタンドタイプ スイーツショップ

坪数    :23.8坪(1F店舗と浴室及び中庭 16.6坪 / 2F住居 7.2坪)

工期    :2.5ヶ月

ご依頼内容 :デザイン / 設計 / 施工 / 厨房設備 / ブランドディレクション / グラフィック

工事前状況 :古民家スケルトン

所在地   :京都市下京区中堂寺櫛笥町

 

概要    :

 

在る状態をなるべく活かした作り込まない店づくりをしたい。

これがお施主さんのご要望でした。

 

これまでずーっとスイーツを中心に作ってこられ、フランスでの生活経験もお持ちのお施主さん。

そのご経験を活かしたお店の開業を決意して 物件を探し始めてはや数年…

 

改めてやっぱり開業する!というムーブに入られた際に 機会で面識を持たせて頂きました。

何軒か物件の内覧を同行した結果、やっぱり最初の物件がイイ。

だけどその家賃を捻出するには…と思案された結果 今のお住まいを引き払って職住一体とするしか方法が無いし、そうでもしないといつまで経っても開業出来ない…で ご決断。

 

という事で京町屋の大改装プロジェクトが動き出しました。

 

急勾配で華奢な階段は イイ雰囲気だけど先を考えると危ないので掛け直し、京都の冬に耐えれる様に住居側の壁には断熱材を敷き詰めまくって。

店舗共用トイレの横にはエアコン装備のサニタリー室(シャワーユニット/洗面/洗濯機)を新設。

 

 

“ ココを生涯の城にする ”というお施主さんの覚悟に応えるには

 

・店舗の動線の中に違和感のない生活動線を敷く

・プライバシーの確保

・永く使う事を大前提とした造作

・極力解体を控え、新設の造作は既設に対して違和感のないモノに

 

などに留意しながらプランを進めました。

 

古物に対する強いリスペクトを持ったお施主さんのご要望に応えるには、そんじょそこらの『古民家リノベ』で養った経験では通用せず、工事期間中はヴィンテージフリークだった自分を呼び起こして丁度イイ位でした。

 

柱・桁・梁を活かすのは元より、傷んでいた箇所や一見汚く見えてしまう様な箇所すら、どうしてもこのままでは職住に支障が出る…という部分以外は全て活かし、劣化が激しい箇所は補修してまででも活かしています。

一方、飲食店ゆえ気になる衛生面は この先々で塵を心配する必要がない様に垂木は全面新規を上貼りしています。

建具は防犯の観点からファサードのみ新規を、それ以外の全てはお施主さんチョイスの古建具。それらを改造して設置しています。

 

活かす活かさないの判断待ちや、活かしたいけど活かしきれない箇所の補修や補強の手段の検討時間、またその感覚を現場が理解する事の困難さから職人が機嫌を損ねたり、諸々で工事の進みが悪くなったり…で結果お施主さんを不安にさせお叱りを受けたりもしました。

 

図面が無効化される程の極めて感覚的でSDGsなお店創り。

それを個々の “ 普通 ” がそれぞれ違う即席チームで行う訳ですので、在る程度の代償は覚悟していましたがやっぱり難しい。

 

こういうお店づくりって、終わった後は “ もうやらんぞ… ” って思うんですけど またお話しがあったら やっぱりオモシロいからやっちゃうんですよね^^;

 

元々こうだった?職人施工?DIY?が表層では良く解らない…みたいなラインを狙ったんですけどそんな雰囲気出てますでしょうか。

 

※2階の住居も 新壁と天井から古梁を露出させたなかなかの新旧融合空間ですが、既に生活を開始されているので自主的に撮影は控えさせて頂きました。

 

 

20230530竣工

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呑み場『ウメダうめだ』

業態    : 立ち呑み屋

坪数    : 4.9坪

工期    : 2ヶ月

ご依頼内容 : デザイン / 設計 / 施工 / ブランドディレクション / グラフィック

工事前状況 : 串焼き屋居抜き

所在地   : 大阪市淀川区十三本町

 

概要    :

 

永らく飲食業界に従事されながら、色々なお店への呑み歩きも日課とされている方が今回のお施主さん。

ナチュラルに十分過ぎるマーケティングを経ていよいよ…の独立開業にお供させて頂きました。

 

現場は十三本町、通称『しょんべん横丁』。

 

あの大惨事から逞しく復興が進むもコロナの追撃で集客が戻りきらず、その後も お店の入れ替わり / 空き物件 / 休業店舗 が点在し、稼働率は5割程度。賑わいで言うと全盛期の1/3にも満たないといったトコロでしょうか。

でも工事中足繁く現場に通う中で、いつ見ても朝10時の開店と共に満席になる立ち呑み屋さんや、週末にはこの横丁を体現しに他所からやって来てる多くのお客さんに都度遭遇。

“ せんべろ ”の発祥の地の様なコノ場所のソノ光景。

やっぱりこの町にはコレが求められていて 先に繋いでいかなきゃなんだなぁ…なんて少し感傷的かつ懐古的になりつつ。

 

そんな需要に応えながらも、この先このエリアを引っ張っていけるお店とはどんなお店であるべきかの自問自答を繰り返して仕上げの手法を幾度も見直しました。

 

お施主さんからのリクエストはシンプルで、『気負わず入れる立ち呑み屋さん』。

元々はファサードのみの改修という事で着工しましたが徐々に内装の依頼が追加されそこそこの工事規模に。

結果厨房を除く全てを触る工事となりました。

 

気軽に…と掲げつつも、せんべろではこの辺りの安くない家賃と高騰する原価を捻出出来ない。

とは言え、最低限の単価は通したい…って意味でウラ難波的な今っぽさを創出したトコロで そういう客層 そうゆう需要じゃない。

で悩んだ挙句 “ 鈍臭さ・古臭さをギリ今っぽく表現する ”… としました。

 

ファサードは

・基礎部分は洗い出して砂目を出した左官

・骨組みを見せたスレート屋根

・チープな雰囲気のブラケットライト

・露出配管は鉄管ではなく塩ビ質をチョイス

・暖簾色は白をやめて酒屋の象徴の紺色に

・建具の鏡板には酸化させツヤ消しにしたウロコ鋼板

・サインは琺瑯(ホウロウ)

 

内部は

・節ありの杉材と構造用合板で木目が主張したチープな雰囲気に

・壁面のミラー貼りで視覚的な広がり効果と 昭和の内装感を(←こっちが本命)

・カウンター垂れ壁にイキったライン照明

 

塗装は全て艶ナシ。

また入り口の3連引き戸は真鍮レールにしてガラスのコーキング留めはなし。

開閉の度に発動するガラガラとした振動音で、入店時に懐かしさや敷居の低さを感じて貰う事を狙いました。

各所の選択とそのバランスは加減がなかなかに難しく、最後に暖簾を掛けてお店に成り切るのを見るまで不安は残り続けました。

 

お施主さんからはロゴ以外はビジュアルに関する殆どを任せて頂きました。

 

この横丁の雰囲気と そのオーナーさんの気取らない人柄に馴染ませつつも、これからまたこのエリアを引っ張っていくべく新しい『場』の在り方は?… の 私なりの解答です。

 

最後、お施主さんに『ココに僕が立ったらおかしいとか思ってるんでしょ〜笑』とニヤニヤして言って頂けた時に、なんだか勝手に報われた気がしました。

今回初めてペアを組んだにも関わらず、コストを合わせつつ細かな変更に応じてくれた製作チームにも感謝感謝です。

 

レトロ寄りのレトロモダンになってたらいいな…と 思うんですが、いい按配になってますでしょうか?

 

 

20230519竣工

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンケーキ&デリ『Delissimo』(パンケーキアンドデリ デリッシモ)

 

業態    : パンケーキカフェ&デリ

坪数    : 5.4坪

工期    : 1.5ヶ月

ご依頼内容 : デザイン / 設計 / 施工 / グラフィック / 家具・厨房機器調達

工事前状況 : 喫茶店居抜き

所在地   : 大阪府茨木市稲葉町

 

概要    :

 

物件を押さえてるんだけど内装プランが進まなくて契約に踏み切れない… という事でHPよりお問い合わせ頂きました。

 

現場は35年間 地域に愛され続けた喫茶店。しっかりと作り込まれた造作物と、大切に使っていた事が伝わってくるその跡地。自然とそのお店と前オーナーにリスペクトを示す方向でプランの打合せが進みました。

 

豊富な飲食業界での経験に基づいた確かなスキームをお施主さんから聞かせて貰いながらも、コチラの話にも耳を傾けてくれるその柔軟な姿勢に “あ、この人成功する…”と感じながらリズム良く情報交換させて頂きました。

 

今回のテーマは『アメリカンダイナー』。
昨今は稀になったテイスト縛りでのミッション、久しぶりに資料を漁りました。
とは言え何らかのカタチで“今”は感じさせないとダメな訳で。
という事で、ハードロックカフェやフーターズ、バーガーキングなど、ローラースケート履いて配膳してたアノ80年代アメリカの空気感を今表現すると…?でプランを開始しました。

 

予算厳守の観点から、レイアウトとファサードは既存活かしであしらいのみ変更。厨房をドライキッチンから土間へ、床はフローリングからタイルへ、天井は解体してスケルトンへ、そして吊り戸棚やベンチ席を新設。
お店を喫茶店からアメリカンダイナーに変貌させる為に触らないで良い箇所など無く、結局それなりの工期を頂戴する改装となりました。

 

カウンターとテーブル、そしてベンチの座面はメラミン貼りで拭き取り清掃を簡易に。椅子はスチール製のスタッキング可能な物をチョイス。ショーケース上部の黒板パネルはマグネット脱着式。
効率追求主義の文化から生まれたアメリカンデザインを様々な選択に反映しました。
また、狭小スペースを考慮し、あまり重くならない様に吊り戸棚などの収納システムは浅め(D300)に設定しています。

 

象徴的なRを効かせたファサードのガラスも勿論既存活かし。
ただ、サンドブラストで刻まれた以前のロゴはシートで隠すしかなく。下地は塩ビながら仕上げにはカッティングシートとしてダイノックを使い、最低限の素材感を担保しました。

 

カラーコーディネートとしては、ベースはコンセプトカラーであるミントグリーンと白のバイカラーで軽さと清潔感を。スケルトンの天井とペンダントライトの無機色にてインダストリアルを。木口を露出させた天板類の木で僅かばかりのナチュラルをそれぞれ表現し、部分使いの黒で全体を締める…としました。

 

開店の祝い花の替わりの寄贈品として、W1600×H800の大型キャンバスアートを。お施主さんがお店のブランディングの一環として用意されていたキャラクターのグラフィックを使わせて貰って勝手ながら店内の一等地の壁のセンターに^^;(詳細は家具/什器ページにて)

 

アメリカンダイナーを今表現するならこうでしょ! と言い切れるトコまでやれたかどうか判りませんが、ソレを彷彿とさせながら これからの若い人にも“カワイイ”を貰えるお店になっていたら嬉しいですね。

 

可能な限り既存流用しながらも予算的に厳しい案件に前向きに取り組んでくれた工務店さんと、モノづくりへの高い見識故にお時間を与えてくださったお施主さんとに支えられて納める事が出来ました。

 

 

20230327竣工

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビール酒場『ゴリラ家』(ビールサカバ ゴリラヤ)

 

業態    :ビール酒場(洋風居酒屋)

坪数    :7.3

工期    :2ヶ月

ご依頼内容 :デザイン / 設計 / 施工 / ブランドディレクション / グラフィック / 家具・厨房機器調達

工事前状況 :焼き鳥屋居抜き

所在地   :大阪市平野区

 

概要    :

 

地元大阪平野での念願の飲食店開業… にご一緒させて頂きました。
物件の検討段階でお声掛け頂き、その十分過ぎる土地勘を活かし同行2軒目で即決。
現場は、対抗二車線の大通りを4日間封鎖して行われる“平野郷夏まつり”の中心部。

祭りの目玉である2日目の夜の“九町合同曳行”では目の前の通りに地車が集結。
その南港通りから杭全(くまた)神社に向かう入り口にあたる “との川歩道橋” の麓。
『だんじりの時はこの辺、人がスゴいんですよ』とは施主さまの弁。

 

そんな夏の平野の震源地の様な場所でお施主さんが作りたいお店とは…
・居酒屋だけど少し洋風にしたい
・これからの若い子達が集うお店にしたい
・この辺には無い感じの店にしたいケドお洒落過ぎると敬遠されそう
・『酒場』を名乗れる感じにしたい
・立ち呑み感を取り入れたい

 

予算の関係上、中は手を付けず居抜きのままにしておいて改修点はファサードに特化しましょう…という方向でプロジェクトがスタートしました。
ディスカッションを重ねる程にアメリカ西海岸テイストがお好きな事や、居酒屋のバタ臭さも嫌いじゃ無い事に触れ、その趣向と上記のご要望とをいかに擦り合わせるかに留意しました。

 

前出の通り、内装は厨房/カウンター/垂れ壁/トイレ/床/天井は前の焼き鳥屋さんのまま表装のみ変更。特にカウンターはハイカウンターにしたかったけど今回は我慢。その代わり店内外にお客さんが勝手に使えるスタンド用跳ね上げ天板を13台設置。お店の集客状況やお客さんの飲食スタイルに合わせ動きを付けれる設計にし、賑わい感に結び付ける事を狙いとしました。

 

元々閉鎖的だった外装は全て撤去、角地の利を活かし2面開口に変更。
ファサードは跳ね上げ天板を起点に高さ関係を整理し、いつも通り情報量を減らす作業をしています。

 

色は黒/グレー/レッドオークの3色で構成しアシンメトリーにして動きを付けました。
入り口建具は木建具とアルミサッシが上下でドッキングした様なデザイン。鏡板にアルポリ合板を使い、グレー部に属させながらテクスチャーを変える事で見どころを作りました。
サイン部の黒塗装のモルタルはエイジングして表情をつけています。

 

店内外のルーバー調に突き付けたパイン材にて“洋”の表現を。80年代、日本のデザインが未だ欧米に憧れていた頃に良く家具等で見られた小懐かしいあしらいを取り入れています。
以前は一升瓶の飾り棚として使われていた垂れ壁も同じく。垂れ壁側に鉄板を仕込み、マグネットシートを施した黒板パネルは脱着可能。営業時は白チョークでメニューが羅列され、洋食店ぽさを助長します。

 

7坪ながらMAX30客は許容出来るコノお店。
夏祭りを筆頭とする非常な集客時には可変式の跳ね上げ天板を発動させ、街の止り木的役割を担います。

 

常連さんがご新規さんにお店の使い方を教えてあげてる…みたいな画を想像しながら設計を進めました。
この『ゴリラ家』が遠くない未来で、夏じゃなくてもお祭りの様に活気のある繁盛店になる事を願います。

 

 

20230127竣工